看護学校では戴帽式をやっているのに、なぜ病院の看護師さんはナースキャップを着けないのでしょうか?
そう言われれば‥わたしも病院で看護師さんがナースキャップを着けてるイメージはないかも⁉
確かに今ナースキャップを着けている病院はほとんどないかもしれませんね!でも、わたしが子どもの頃‥30年以上前ですが、看護師さんはみんなナースキャップをかぶっていました。
実は‥他の医療職ではそういったキャップはないのです。
でも看護師だけはナースキャップを着けているって不思議ですよね~。
今回、ナースキャップの始まり、そしてなぜ現在ナースキャップが廃止されたのか、調査して分かったことをお伝えしていきますねヾ(≧∇≦*)/
看護師はいつからナースキャップをつけたの?
ナースキャップを着け始めたのは‥実はナイチンゲールが看護師として活躍し始めた時代です。
つまり19世紀中ごろ(1850年前後)だと言われています。
当時のヨーロッパでは『男尊女卑』が当たり前の時代です。
そして、怪我や病気になると自宅で療養し、家族に看病されるのがが基本でした。
なので、当時は『病院に入院する』というのは身寄りがおらず、助からない人が入る場所という認識で、死刑宣告に近いものでした。
病院の環境は不衛生で、働いている人は寡婦(夫と離別した女性)、元売春婦、受刑者などの下層階級の女性が看護師として働いていました。
一般的な女性は家の外で働くことがほとんどない時代です。高貴な人であればなおさらで、そういった意味ではナイチンゲールは例外の中の例外と言えます。
※ナイチンゲールやナイチンゲールの生きた時代にちょっと興味あるかも‥という方は、下記の記事に書かれていますので、もし良かったらご覧くださいねヽ(*^^*)ノ
⇒「【世界で最も有名な看護師】ナイチンゲールを理解しよう!生い立ち・時代背景を解説!」
そういったこともあり‥看護師が患者さんの私物や食べ物を横領したり、仕事中に飲酒したりするのも多かったようです。
そのような中で、看護学校で医療や看護について学んできた人が病院で働くようになります。
いよいよ職業人としての看護師が仕事に就くことになった訳です。
そういった看護師とそれ以前の看護師を分けるために、病院では看護師がユニフォームを着るようになります。
また当時の看護師の活動は無給(奉仕)で、宗教的な意味合いも強かったようです。
そのため、看護師のユニフォームは、女子修道院の尼僧が身に付けていた物がモチーフとなりました。
その中にはナースキャップもあります。
このナースキャップにはベールがついていて、『慈愛』『博愛』『奉仕』『責任』などの精神的シンボルとなっていたようです。
ナースキャップをつける意味は?
なので‥ナースキャップを着けるのは精神的シンボルとしての意味合いが大きいと言えます。
そして、このナイチンゲールの時代では、それ以前の専門性のない看護師と区別する意味合いも大きかった訳です。
看護師はなぜナースキャップを着けなくなったの?
その後はナースキャップは看護師の象徴として存在していましたが、ベールもなくなり、より小さいものになっていきました。
1970年代になると、イギリスでは精神科病院などユニフォームを着用しない(私服着用)病院も増え、男性看護師も増えたことから、ナースキャップをつない病院が増えていきました。
実は、この頃米国ではナースキャップにまつわる以下のようなトラブルも多かったようです。
病院によってはナースキャップの着用を規定している病院もありましたが、看護師がナースキャップを着けないで仕事をする人もおり、病院とトラブルになり、看護師の賃金が減給されるということもあり、裁判にもなりました。
裁判判決では制服規定(看護師のナースキャップ着用)は差別的であるとの見解が示されました。
この判決を通して、さらにナースキャップの廃止に向けて拍車が掛かったと思われます。
世界的には1980年代にはかなりナースキャップが廃止されたようです。
そして日本では1990年代にナースキャップ廃止の波に乗っています。
ナースキャップが廃止され始めてから20年以上が経つわけですから、現在の学生たちは看護師がナースキャップをしていたのを見たことがない‥場合によっては知らないかもしれませんね。
日本においては、病院と看護師との間のトラブルはなかったようですが、ナースキャップ着用に対する賛否両論があり、各病院でも検討されていたようです。
【ナースキャップ着用賛成派の意見】
・ナースキャップはシンボルであり、身に着けると気持ちが引き締まる。
・ナースキャップを着けることで、病院内で多職種と区別される。
・ナースキャップがないと、社会一般の人の看護師に対するイメージが崩れてしまう。
【ナースキャップ着用反対派の意見】
・ナースキャップは糊付けされており、細菌繁殖しやすく不潔である。
・ナースキャップがカーテンや点滴などいろいろなものに引っかり、動作の支障になる。
・ナースキャップが患者にぶつかり、患者を傷つけてしまうリスクがある。
・髪型にナースキャップの痕がつく。
・ナースキャップを留める際のピンで頭皮が傷つく。頭が禿げてしまう。
・感染症部屋に出入り時のキャップ着用時にナースキャップが邪魔になる。
ナースキャップを着けている病院
調べた限り見つかりませんでした。
ただし看護学校では教員がつけている場合もあるようです。
病院内でナースキャップを着けている人を見かけたら、ひょっとしたらそれは‥看護学校の先生かもしれませんね♪
戴帽式の由来とは?
戴帽式は、元々はヨーロッパで女子修道院の尼僧がイバラの冠を被り、神に仕える誓いを立てること、つまり入信式に由来しているものです。
戴帽式ではイバラの冠の代わりにナースキャップを頂く訳です。
戴帽式の流れは大きくは以下のような形が一般的です。
戴帽の儀⇒誓いの言葉⇒キャンドルサービス
戴帽の儀でナースキャップを頂いた後に、『誓いの言葉』を言います。
『誓いの言葉』は『ナイチンゲール誓子』を唱和したり、『自分たちで考えた誓いの言葉』を唱和する場合の2つのパターンがあります。
ちなみに‥『ナイチンゲール誓子』は実際にナイチンゲールが誓った言葉ではありません。
ナイチンゲールの偉業を称え、1893年にアメリカ合衆国のデトロイト看護婦学校長婦人が中心となって「ヒポクラテスの誓い」に倣って作成したものが『ナイチンゲール誓子』です。
われはここに集いたる人々の前に厳かに神に誓わん
わが生涯を清く過ごし、わが任務を忠実に尽くさんことを。
われはすべて毒あるもの、害あるものを絶ち、
悪しき薬を用いることなく、また知りつつこれをすすめざるべし。
われはわが力の限りわが任務の標準を高くせんことを努むべし。
わが任務にあたりて、取り扱える人々の私事のすべて、
わが知り得たる一家の内事のすべて、われは人に洩らさざるべし。
われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸のために身を捧げん。
引用:フローレンス・ナイチンゲール誓詞https://kouyamajk.jimdofree.com/%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%AB%E8%AA%93%E8%A9%9E/
ちなみに‥『ヒポクラテスの誓い』とは
医学の父と言われるヒポクラテスによる誓言と言われ、医学に携わる者としての倫理や任務を誓う宣誓文のことを言います。
そして、最後はキャンドルサービスといって、ナイチンゲールがクリミア野戦病院で病院内を巡視したのに習って、学生が手にランプをもって会場内を廻ります。
戴帽式はナースキャップをかぶらなくなった現代においても続いています。
それは戴帽式を通して、看護師を目指す学生たちが「ナイチンゲールのように人に対する『慈愛』『奉仕』『責任』などの精神をしっかり持ちます!」という誓いを立てることが大切だからです。
だからこそ、今後も戴帽式がなくなることはないでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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