こんにちは!ねこ太🐈です。
『ラポール』って言葉‥今までにどこかで聞いたことがあるでしょうか。
これは人間関係を表す言葉の1つです。
看護師や看護学生であれば、トラベルビーの看護理論で出て聞いたかもしれません。
トラベルビーは看護師と患者が、4つの位相を経て、最後に到達する関係性が『ラポール』であると言っています。
トラベルビー看護理論
第1の位相:最初の出会いの位相
第2の位相:同一性
第3の位相:共感(empathy)
第4の位相:同感(sympathy)
第5の位相:ラポール(rapport)
ではこの『ラポール』って何なんでしょうか?
『ラポール』ということを知っておくと、看護だけに限らず、実は家族や友人さらには職場や学校の人間関係をより良くしていくことにもつながりますよ♪
もちろん、それは学校におけるパワハラをする教師に対しても有効です!
今回は「ラポールとは何か?」「どうすればラポールを形成できるのか?」について考えていきたいと思います!
ラポールとは信頼関係なのか?
結論からいうと、『ラポール』とは『信頼関係』とは厳密にはイコールではありません。
『ラポール』を日本語に訳すときに、多くの本で『信頼関係』と訳されることが多いですが‥
『信頼関係』とはお互いが相手を信じ頼ることができる関係のことを言います。
ちょっと例を挙げて考えてみましょう!
つまり‥双方において相手に期待している役割を、相手が果たしてくれるだろうと思えることが信頼関係なのです。
もう少し簡単に言うと、相手が自分の期待に応えてくれるとお互いに信じているということです。
ですから、自分としては相手に対して好印象を持っており、良い関係性であることは間違いありません。
では、患者‐看護師だけでなく、家族間、恋人、友人‥わたしたちが目指す関係性って、この信頼関係なのでしょうか?
先程‥例に挙げた「医師と患者との関係」について考えてみましょう。
実はこういったことって臨床ではよくある光景です。
信頼関係があるにも関わらず、患者さんの方は先生に対して質問することができない‥。
理由は「先生に時間をとらせて申し訳ない」とか「『こんなことも分からないの?』と思われてしまうのではないか」とか、様々ですが、訊きたくてもできないんですよね。
これって本当に医療者が目指すべき関係でしょうか?
医療者と患者さんとの関係に限らず、自分の家族や恋人、友人との関係にも同じことが言えるのではないでしょうか?
また先程紹介したトラベルビーの看護理論の第4の位相の『同感』を考えてみましょう。
『同感』とは相手の思いに共感し、その思いを実現させたいと思うことです。
つまり、『ラポール』とは信頼関係を土台にさらに一歩踏み込んだ先の関係なのです。
ラポールとは何か?
『ラポール』とは昔の日本語訳では『精神感応』と訳されていたようです。
余り聞いたことのない言葉ですよね。
意味としては以下のようになります。
言葉などの合理的な通信手段ではなく、感覚的に相手に自分の考えや感じたことが伝わること。
テレパシーや思念伝達などとも呼ばれることもあるようですが‥かなり怪しい感じがしますね♪
でも、普段わたし達が気の合った人との間で自然としている『共感』というのも、実は‥この部類に入ります。
普段の様子は余り変わらないけど、「今日はうちの子、何となく元気がないな‥」とか、逆に「あれっ、何かいいことでもあったのかな✨」など‥
理屈ではなく、直感的に感じる部分ってありますよね。
まさにそれが『精神感応』です。
またもう少し身近な言葉で言えば、『阿吽の呼吸』『以心伝心』『ツー(と言えば)カー』などもこれに含まれます。
何も言わなくても、もしくは少し話しただけで、それ以上の何かがお互いに相手に伝わることです。
これが『ラポール』の正体です。
また、当然のことながら、そのベースには信頼関係があるということは言えます。
ラポールを築くと何がいいのか?
『ラポール』を築くことによって、『相手との心理的な距離が縮まり関係性が深まる(深い絆が結ばれる)』ことができます。
より具体的なメリットとして以下のようなことが考えられます。
・相手が家族や友人であれば、家庭であったり、その人の傍が安全で心が安らげる場所となる。
・相手が職場や学校の仲間であれば、役職や立場などの関係性を超えて協力できる。
また意見も出しやすくなり、活発なブレーンストーミングができるようになる。
・相手が患者さんや顧客であれば、相手の話に耳を傾け、相手の意見を尊重するようになる。
・カウンセリングなどの場であれば、クライアントは自分の悩みを打ち明けやすくなる。
・このような関係性が築けることで、自分に対する自己肯定感も高まる。
様々なメリットがありそうですね。
ここで、ちょっと‥わたしの看護師としての体験事例をお話します。
わたしが看護師3年目の頃、建築現場での転落事故によって脊椎損傷となって両手両足がほとんど動かなくなってしまった30代の患者さん(以下Aさんとします)を受け持ったことがあります。
入院されてきいた当初は表情も暗く、声を掛けても一言くらいしか返ってくることはありませんでした。
毎日身体を拭いたり、入浴なども提案していましたが、断られることも多かったです。
Aさんはわたしと同性で年齢が近かったこともあり、わたしはなんとなく親近感を感じていました。
失礼ながらも、無口なAさんについて、いろいろ想像しながら関わっていました。
「確かに女性の看護師さんに裸をみられるのはちょっと恥ずかしいよな~」
それに‥
「この若さで寝たきり状態になってショックも大きいし、辛いだろうな」
「いますぐ希望をもって生きろって言われても‥希望なんてすぐには見つからないよな」
「家族も一人も面会に来ないけど、ひょっとしたら両親とはうまくいっていないのかもな‥」
そんなことをいつも思いながら、Aさんの食事介助をしたり、お身体を拭いたりしている内に、わたしも、ごく自然とAさんにプライベートなことを訊いたり、逆に自分のプライベートを話したりするようになっていました。
そんな状況が続いていると、今度はAさんの身体を拭きながら、「あっ、今きっとAさんはこんな事を考えているな~」とか不思議と分かるような感じがしてきました。
逆にAさんの方もわたしが思っていることが分かるらしく、「ねこ太くん、こんな事思ってたでしょ~」など言ってくることもありました。
Aさんは決してワガママな性格ではありませんでしたが、ときに「歩きたい」と言って意志を曲げないこともあったりしました。
わたしも端座位もままならないAさんの歩行は無理だと思いましたが、それでも歩いてみたいというAさんの思いに沿って、リハビリの先生と一緒に両脇を抱えながら病棟の廊下を歩いたこともあります。
他方で、裸になるのが恥ずかしくて、できれば入りたくないリフトバスも「ねこ太くんがそういうなら仕方ない!」といってくれて、了承してくれることも多々ありました。
このようにAさんとわたしは相手のちょっとした仕草から思いを感じ取れる(以心伝心)ようになっていたと思います。
さらに自分の意見も大切ですが、お互いに相手を尊重する関係性も築けていたのではないかと思います。
実は‥ここまでの関係性(ラポール)を築いて看護できたと自分で思うのは、20年以上看護していて10人もいません。
理由は入院期間が短く、関係性が築ける前に退院してしまうなど‥様々ですが、家族や友人以外の人と『ラポール』を形成するというのは決して容易なことではありません。
ラポールをどのようにして築くのか?
では、次にどうすれば『ラポール』を築いくことができるのかを考えてみましょう。
『ラポール』を形成するためには以下のような方法があると言われています。
ミラーリング⇒相手の仕草などを真似ること
ペーシング⇒言葉の抑揚などを相手に合わせること
キャリブレーション(補正)⇒相手の仕草などから相手の心理を推測すること
バックトラッキング⇒相手の話した言葉をそのまま口に出すこと
では、ここで想像してみましょう!
あなたと話している人が上記の4つの行動をとった際に、あたなはその相手に対して、どんな感情を抱くでしょうか?
わたしだったら‥「自分の仕草を真似されている」「オウム返しされている」と感じてしまうかもしれません。
そして、その時点で「ふざけているのかな‥」「バカにされているのかな‥」と感じてしまいます。
つまり、心を伴わない技術はいくらやっても意味がない(むしろ逆効果)ということです。
またカウンセリングでも、『ラポール』形成に向けて以下の3つ態度がよく言われています。
純粋性(自己一致)⇒聴き手であるカウンセラーが心理的に安定していること
受容的態度⇒相手を批判することなく、思いやりの気持ちをもって相手の言動を受け止めること。
共感的態度⇒相手の物の見かた・考え方にそって相手を理解しようとすること
これらは先程の技術(テクニック)よりも、かなり深い『態度』の領域に入っています。
つまり、『ラポール』を築く上で最も大切なことは、ただ単に技術を持ちいることではなく、相手に対する心の在り方ということです。
プロのカウンセラーであれば、可能かもしれませんが‥
正直、わたしには『純粋性(自己一致)』『受容的態度』『共感的態度』の3つを同時に意識していくというのは難しかったです。
なので、わたしはもう少し簡略化して、『相手を自分と同じ一人の人間として捉えて関わる』ということを意識して患者さんと関わっていました。
ここのポイントは『自分と同じ人間』という部分です。
たとえば、相手の職業に意識が向いてしまうと、その人の『職業的な性格傾向』や年収など‥職業で人を見てしまったりします。
『職業的な性格傾向』って‥例えばどんなことですか?
『職業的な性格傾向』は、例えば教師だったら「人に教えてあげることが好き」とか、銀行員の人は「真面目な人が多い」とか、逆に、芸能関係やYouTuberとかは「ユーモアのある人が多い」とか‥ですね。
それに『疾患による性格傾向の違い』っていうのも、医療者の中ではよく言われたりします。
例えば‥リウマチの患者さんは、神経質的な傾向があって、不安を感じやすいと研究結果から言われています。
その他に、『相手と自分との立場』というのもあります。
看護師と患者さんだったら、『援助する人』と『援助される人』みたいなことね!
つまり、「〇〇という職業のAさん」とか「△△という疾患を患ったBさん」、さらには「わたしがお世話をするCさん」というように考えてしまう訳です。
自分とは職業の違うAさん⇒価値観や考え方も違うであろうAさんと私⇒上手く話が嚙み合うか不安⇒お互いに心が安定しにくい(×純粋性(自己一致))
疾患を患ったBさん⇒ちょっと気難しいBさん⇒ちょっとしたことで怒られてしまうかも⇒お互いに受容的に関わるのが難しい(×受容的態度)
わたしがお世話をするCさん⇒援助を必要とするBさんと援助する私⇒援助する人‐される人の関係⇒お互いに共感的に捉えにくい(×共感的態度)
ここで大切なことは、人間関係は自分と相手と双方で作っていくものということです。
自分だけが気を付けても、相手が同じであるとは限らないという難しさもあります。
そして、もう一つわたしが大切だと思うことは、決して『利己的にならない』ということです。
わたしたち看護師や看護学生は、つい無意識のうちに『看護するために‥』『実習するために‥』という思いで、患者さんとの関係を築こうと考えてしまうことがあります。
それは、決して悪いことではありません‥。
しかし、それは『相手のため』というよりも、『自分のため』という意味合いが大きいと言えます。
そういった心持ちでは『ラポール』はおろか、いつ崩れるか分からない『砂上の信頼関係』しか築くことができないでしょう。
職場や学校の人間関係に応用していくためには?
職場や学校の人間関係って難しいですよね。
わたしも、新人の頃は厳しい先輩や言葉のキツイ先輩がいて、どうしても苦手でした(´・ω・`)
でも、人って、こういうことってないですか?
イヤな態度をされたら、イヤな態度で返すけど‥
優しくされたら、優しい態度で返したくなる♪
これを『返報性の原理』といいます。
なので、多少時間は掛かるかもしれませんが、必ず自分の態度が変われば、自然と相手の反応も変わっていくんですよね!
では、さっそく‥職場や学校で、自分がどうしても苦手な人を思い浮かべてみましょう!
その人は、先輩や上司など立場が上の人かもしれません。
あなたは、その人から教わる関係にあるかもしれません。
でも‥ちょっと考えてみましょう。
その関係をいったん忘れて‥街中で出会った場合、お互いスーツや職場のユニフォームや学校の制服ではなく、私服を着た状態で出会ったとしたら‥もうそれは『ただの人』です!
お互いの関係に上も下もありません。
その人が何かキツイ一言をいってきたら、どうしますか?
もし、わたしだったら‥
「世の中にはいきなりそういう事を平気で言ってくる変な人もいるかもな~」とか
「この人は今までそういうキツイ事を言われる世界で生きてきたんだな‥可哀そうだな‥」くらい思って受け流してしまうと思います。
それでいいんです♪
サラッと受け流ししまえばいいんです。
そして少~し心の余裕があれば、その人と『ラポール』を目指して、思いやりの心をもって苦手な先輩を許していきましょう。
あんたさぁ~、こんなのも分かんないの?学生のとき何やってたの!
こうやってやるのよ!
すみません。これを機にしっかり覚えますね!
ナス美先輩、教えていただいて、ありがとうございます♪
注意されたら、まずは「すみません」と言って、いったん相手の言葉(気持ち)を受け止める!
ここでのポイントは、こちらがマイナスな気持ちで返事をしないことです。
ここが心にちょっと負担ですが‥、ちょっと頑張って一歩踏み出してみましょう!
1回でもできると、自分は正しいことを相手に返している訳ですから、自分の行いに自信(自尊感情)が持てるようになります。
そして、相手に良いことを返しているため、今後どこかであなたに対して良いことを返さないと気持ち悪くなってしまうはずです‥‥きっと✨‥‥いや必ず!!
ぜひ、職場や学校で、ちょっと苦手な人がいたら、元気を出してやってみましょうね♪
さいごに
『ラポール』を築くためには、相手はともかく、まず始めは自分の心‥そして態度を変えていく必要があります。
しばらくは辛いかもしれませんが、相手からも良い反応が返ってくるようになると逆に楽しくなってきたりします。
自分の利益のために、関係を築くのではなく、相手を思いやる気持ちで人と関わっていきたいですねヾ(≧∇≦*)/
ぜひ最初の一歩を踏み出してみましょう!ガンバレ~!ヽ(*^^*)ノ
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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